優待クロスでは現物買いと信用売りを同時に行ないます。
信用売りには「一般信用取引」と「制度信用取引」の2種類があります。
一般信用取引は証券会社の決めたルールで行なう信用取引です。制度信用取引は証券取引所の決めたルールで行なう信用取引です。
優待クロスをするなら、2つどちらのほうが良いのでしょうか?
この記事を読めばその答えがすぐに分かります。
目次
優待クロスは一般信用と制度信用のどちらがおすすめ?
優待クロスの空売りは一般信用取引を選択したほうがよいです。
理由は「逆日歩(ぎゃくひぶ)」を回避できるから。
逆日歩とは、株が在庫切れになったときに証券会社が別の場所から借りてきたときに発するコストです。このコストは投資家が負担しなくてはいけません。
逆日歩の計算法は「1株あたりの逆日歩×保有株数×建玉の保有日数」となります。
例えば、以下のケースで計算してみます。
- 1株あたりの逆日歩:3銭
- 保有株数:1,000株
- 建玉の保有日数:5日
3銭×1,000株価×5日=1,500円
上記のケースだと1,500円の逆日歩が発生します。
逆日歩は必ず発生するわけではありませんが発生すると、優待クロスで得られる株主優待の価値を超えてしまうことがあります。
しかし、一般信用取引で空売りしておけば逆日歩は発生しません。
逆日歩は制度信用取引のみに発生するものだからです。
このため、優待クロスの空売りは一般信用取引で行なうのがおすすめです。
一般信用取引の優待クロスにはデメリットもある!
一般信用取引の優待クロスにもデメリットがあります。
それは在庫切れです。
一般信用取引の場合、証券会社と投資家のみで取引が完結します。よって、その銘柄の在庫が無くなっても別の場所から借りてくるようなことはしません。別の場所から借りてくるのは制度信用取引のみです。
そのため、在庫切れになったらその銘柄はそれ以上空売りができません。
人気の銘柄になるほど在庫切れになりやすいため、気をつけておきましょう。とくに多くの人が優待クロスを行なう「権利付最終日」に近づくほどその可能性が高まります。
権利付最終日とは、株主優待や配当金が得られる権利を獲得できる最終日です。
よって、一般信用取引を行なうときはその銘柄の在庫がどれくらいか確認しておく必要があります。
各銘柄の在庫は証券会社のツールで銘柄を選択すれば確認できます。「信用残」や「信用買い残数・信用売り残数」などと記載がある部分の「売り枚数」や「売り残数」が在庫数です。
一般信用取引の優待クロスはこの3つに注意!
一般信用取引の優待クロスは次の3つに注意してください。
- 配当金目当てには使えない
- 売買手数料が発生する
- 貸株料が発生する
配当金目当てには使えない
一般信用取引の優待クロスは配当金目当てには使えません。
現物買いをしているため配当金を得ることはできますが、一般信用取引をしていることで「配当落調整金」を支払う必要があり、それによって配当金が相殺されてしまうからです。
配当落調整金とは配当相当額を調整するためのものです。信用買いの場合は受取れますが、信用売りの場合は支払わないといけません。
配当落調整金は一般信用取引の場合、配当金の100%を支払う必要があります。
よって、仮に配当金が1万円のであるなら1万円を支払わないといけないのです。
なお、配当金には20.315%の税金がかかります。よって、1万円の配当金の場合、実際に受取れる金額は以下のとおりです。
1万円-「1万円×20.315%」=7,969円
配当落調整金の支払いは1万円であるため、2,031円マイナスの状態になりますが、このマイナス分はあとで損益通算によって戻ってきます。
よって、配当金は最終的にはプラスマイナスゼロで終ります。
売買手数料が発生する
一般信用取引の優待クロスは「売買手数料」が発生します。
発生する売買手数料は以下の4つです。
- 現物買いの新規買い手数料
- 現物買いの決済手数料
- 一般信用取引の新規売り手数料
- 一般信用取引の決済手数料
株式では新規売買時と決済時に売買手数料が発生します。
例えば、売買手数料が60円であれば、「新規売買時60円+決済時60円=120円」と往復で120円の売買手数料を支払う必要があるのです。
優待クロスの場合は買いと売りを同時に行なうため、全部で4回の売買手数料が発生します。
売買手数料は通常それほど高額なものではありませんが、それでも発生すると受取れる株主優待の価値を減らすため、少しでも軽減したいです。
売買手数料を抑えるには以下の2つの方法が有効です。
- 売買手数料が安い証券会社を選ぶ
- 売買手数料が無料になる「定額プラン」を利用する
売買手数料は証券会社によって違います。売買手数料が安い証券会社を選ぶことで軽減することが可能です。
証券会社によっては、売買手数料が無料になる「定額プラン」を採用していることもあります。例えば、「1日100万円までの取引金額なら無料」などです。そうした定額プランを利用して売買手数料をお得にするのも良い手です。
貸株料が発生する
一般信用取引の優待クロスでは「貸株料」の発生にも注意です。
貸株料とは、簡単に言えばレンタル料です。一般信用取引は証券会社から株を借りるため、借りるための費用が必要なのです。
貸株料の計算方法は「空売りの約定代金×貸株料の利率÷365×保有日数」。
例えば、空売りの約定代金が50万円のとき、貸株料の利率が2.0%で保有日数が20日なら以下のとおりです。
50万円×2.0%÷365×20日=547円
この場合だと547円の貸株料が発生しています。
貸株料の利率や保有日数によって決まってくるため、貸株料を抑えるには以下の2つの対処法が有効です。
- 貸株料利率の低い証券会社を選択する
- 保有日数を短くする
貸株料利率は証券会社ごとに違うため、利率の低い会社で空売りを行なうようにすれば貸株料を軽減できます。
保有日数を短くするのも有効です。貸株料は保有日数が長くなるほど増えていくからです。
【補足】制度信用取引の優待クロスにもメリットある
ここまで一般信用取引の優待クロスについて解説してきましたが、制度信用取引の優待クロスにもメリットはあります。
人によっては制度信用取引の優待クロスのほうが向いている場合もあるため、ぜひ確認しておいてください。
在庫切れがない
制度信用取引には一般信用取引とは異なり在庫切れによる販売停止がありません。
制度信用取引では在庫切れになると他所から借りて在庫を補充し、常に取引できる状態にします。
よって、一般信用取引では空売りできない銘柄でも制度信用取引なら空売りできるメリットがあります。
ただし、証券会社が他所から借りてくると逆日歩が発生するため注意が必要です。
配当落調整金で利益が出ることがある
制度信用取引の空売りでは、配当落調整金で利益が出ることがあります。
制度信用取引で支払う配当落調整金は配当金の84.685%であり、損益通算によって戻ってくるお金を含めると僅かに利益が発生するからです。
仮に配当金が5,000円だとします。
配当金には20.315%の税金がかかるため、実際に受取れる金額は3,843円です。
配当落調整金は配当金の84.685%であるため、
5,000円×84.685%=4,234円
となりこの場合だと4,234円です。
配当落調整金の4,234円には損益通算分の20.315%が返却されるため、980円が戻ります。
よって、最終的には以下のようになるのです。
3,843円(配当金)-4,234円(配当落調整金)+980円(損益通算)=589円
このように、制度信用取引の空売りでは配当落調整金で利益が出ることもあると覚えておきましょう。
まとめ
一般信用取引と制度信用取引のどちらが優待クロスに向いているかですが、一般信用取引のほうをおすすめします。
一般信用取引であれば逆日歩の発生を防げるからです。
ただし、一般信用取引では在庫切れがあるため、気をつけてください。
また、以下の3つにも注意が必要です。
- 配当金目当てには使えない
- 売買手数料が発生する
- 貸株料が発生する
制度信用取引の優待クロスにメリットがないかと言われればそんなことはありません。次の2つのメリットがあるため、人によってこちらのほうが向いている場合もあります。
- 在庫切れがない
- 配当落調整金で利益が出ることがある
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